レポート

Winter2023

no.56

WEB掲載日

2023年3月2日

神戸の「農」を支える水をめぐって走る農村ライド 「EAT LOCAL KOBEサイクリングツアー農村編」 2022年10月10日(月・祝)at 神戸市~明石市(兵庫)
eatlocalkobe.org

右端はナビゲーターの吉田さん。北区の里山はアップダウンのある道、西区を抜けて河口に近づくと平坦な道に。地形の変化をダイレクトに体感できるのが自転車ツアーならでは。

 “神戸に暮らし、ローカルを食べる”をキーワードに、マルシェやイベントを企画する「EAT LOCAL KOBE」のサイクリングツアー第二弾は、Eバイクに乗って農村部へ。前号で紹介した第一弾の「漁村編」では、六甲山から港湾部に流れる地下水が育んだ豊かな漁場をガイドしていただいたが、今回は六甲山の北側に流れている「農業を支える水」を地元の農家さんと一緒に自転車で追いかけた。
 

ランチは淡河町の自転車フレンドリーな純喫茶「カランコロン」さんのお弁当。古民家の隣で実る稲穂を眺めて一息。

ルートはワンウェイで、北区の「道の駅神戸フルーツ・フラワーパーク大沢」に集合してから、ゴールのJR明石駅を目指す約50km。前半は、地産地消ショップ&レストラン施設「FARM CIRCUS」スタッフ、吉田彰さんのナビゲートで、北区の大沢エリアで栽培される神戸ワイン用のブドウや神戸牛の産地を見学した後、地元の農家やマイクロファーマーズスクールの畑を訪問。大規模な生産者から、小規模多品種農家、農業を目指すビギナーまで、“農家”とひとくくりにできない多様さに驚く。里山をぬうように続く道を、Eバイクのパワーで坂をものともせず、快走した。
 

ツアー後半、神戸市西区の農家「チアファーム」さんの畑で旬の落花生をいただく。農家さんとの対話も楽しい。

淡河エリアの古民家「FARM HOUSEケハレ」で野菜いっぱいのお弁当をいただいた後は、農業用水「東播用水」の流れをたどりながら西へ。後半は、西区で「Moto VegetableFarm」を営む農家の安福元章さんのナビゲート。土木遺産「御坂サイフォン橋」や呑吐ダムに寄り道しつつ、この地の農業の歴史も学んでいく。

「明治期に始まった疎水事業をはじめ、農業用水を確保するためのインフラが、神戸北西部から兵庫県南東部にかけて広がる農業地帯を支えているんです」と安福さん。なるほど、「風景を成立させているシステムも含めて鑑賞できるとおもしろい」と、本紙no.55で取材した八馬先生(『日常の絶景』著者)のお話でもあったが、まさにこの風景も“システム”。地面の起伏を脚で感じ、風や光を全身で受けるうちに、頭の中で全部がつながって、これまで知らなかった「神戸の風景」がしっかりと見えた一日だった。
text by 杉谷紗香(cycle編集部)
紙面掲載日:2023年1月20日
※記事の内容は紙面掲載時点の情報です
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